奥村初音 1stワンマンライブ「ありがとう」〜17歳の頃の夢、あなたは今も覚えていますか?@赤坂BLITZ(10/19)

当日、雨が降りそうな天気。到着。バスケの3on3のイベント。風が吹くと肌寒いくらい。

今回は、Aさんの捨て身の強運にあやからせてもらってかなりいい位置でみました。えーPAが云々言えない位置!会場いっぱいの客入り。1000人くらい?完全招待制でチケあっても来ない人が多数いるなか、よく集まったと思う。

長くなるから先に書いておくけど、印象に残る本当に良いライブでした。

第1部 ストーリーライブ『君を想うと…』

  • 開演前

ステージにセットされた学校の椅子や机。開演15分前くらいから特に合図もなく、ステージに6〜7人の女子高生が現われダベっている。観客に向かって声を張ることはなく、ただそこにいるかのように演技している。
演劇/演劇でない時間をどのようなフレームで設定するかは、芝居にとっていつも問題になることで、普通は「暗転」によってその境界を明確に区切る。今回のような演出は、小劇場系の芝居では見たことがあったけど、大舞台かつ音楽のライブでフレームへの配慮がなされていることには感心した。まぁ始まってしまうとふつうの芝居なんだけど、ライブ開始時刻に鳴ったチャイムの後の始業の挨拶「おはようございまーす!」に、観客が「おはようございま〜す!」と答えたことで、ある意味この演出は完璧になったと思う(´U`;;

1曲ごとに「役者のモノローグ」→「初音ちゃんの歌」という流れ。全体を通してひとりの女の子が恋をして別れ、それを受け止めていくストーリー。初音ちゃんは、イベントでのMCも、次に歌う曲と関係のある話をして曲に入るので、この形式はいつもやっていることのいわば拡大版。
今回面白かったのは、役者たちと初音ちゃんのいる空間/時間が完全に切り離されていたこと。初音ちゃんも役者と同じように制服を着ていたんだけど、役者たちとセリフを交わすことはない。「夏色の恋」のとき顕著だったように、舞台上の役者として彼女をみるなら、初音ちゃんはその場にいながら、その場にいないような存在として登場していた。*1ノローグという性質も相まって、物語は、一度終わってしまったもの、通り過ぎたことを、もう一度辿りなおしているように感じたんだけど、このときの初音ちゃんは、語られている時間とは別の時間軸にいたように思う。もしかしたら、あのとき観客が聞いていたのは、少し位相のズレた、近いような遠いような…もしこういってよければ、過去であり未来であるような場所から聴こえてくる”歌”や”声”や”言葉”だったんじゃないかな?

でもね、そんな形式上の演出(もしくは偶然の産物)を差し置いても、第1部での彼女の姿には特別なものを感じざるを得なかった。

何度か見たことがある人ならわかるかもしれないけれど、第1部での初音ちゃんは、いつもと同じようには歌ってなかったと思う。ちゃんと役者として演技の渦中にあって、その上で歌ってた。ひとりひとりのお客さんの顔を見るというより、前を向いて、少し遠くのほうをまっすぐ見つめながら歌ってた。

なんかさ、この日の彼女の凛々しい立ち姿と、近くで見れば見るほど、動じない澄んだ目の印象は、たぶんずっと忘れないと思う。「ふたり」の間奏で、光と暗闇の中で目を閉じて、始まる少し前に静かに目を開いて前を向いたときの姿は、ぼくにとってきっと、これから絶えず参照するような新しい基準の一つになる。

さて、ようやく曲の感想。構成は、エレキギター,ベース,ドラム,キーボード,バイオリン。ほぼすべての楽曲にバイオリンのアレンジが加わる。まず思ったのは、ワンマンに合わせてよくまとめてきたなぁってこと。そして決して喉が強いとは言えない初音ちゃんも、この日に合わせてきちんとコンディションを整えてきたようで、一曲目から声もよく出てた。
個人的なハイライトは「ふたり」「砂」の流れ。青臭くかつ今回の演出にあった派手目なギターの音も、「ふたり」では、控えめなギターのカッティングとして心地良く鳴っていて、一曲目「あした晴れたら」と同様にストリングスのアレンジが印象的。そして溜めの後のサビの声!鳥肌。
つづいての「砂」。この曲は、実は今まで印象の薄い曲でした。サビの盛り上がりが単調すぎるというかイベントで聴いても全体的に平板な感じだったんですよ。。でもこの日の「砂」は、サビの「積み重ねていく想いは…」という歌詞の意味と、畳み掛ける単調なリズムがシンクロするようで、静かに着実に気持ちが盛り上がっていった。この曲だけ、間奏中に役者のモノローグが入る。この日の「砂」が素晴らしかった理由は、曲か物語かに分けて言えないかもしれない。なんか初めて「こういう歌だったんだ」って思えた。この日のベストアクトでした。

インタビュー

東京プリン牧野さん(またお前か!)の司会による、初音ちゃんへのインタビュー。かなり笑わせてもらった。曲のストックは110〜120曲あるとのこと。卒業後は「東京へ行きたい」とのこと。待ってます!あとは行った人だけのお楽しみw

第2部 ライブ

通常のライブ開始。ということで、レポも通常営業へ戻るよ!(長すぎるだろコレ!笑)
初音ちゃんは着替えて登場。ペイズリー柄ボヘミアン風のワンピ。下にも白いワンピを重ねて、濃茶のタイツに淡い土色のブーツ。そしておでこ全開だコレ!!!!ネイルなんて薄いピンクのマニキュアだけなんだコレ!!!!
その後のMCで「アップテンポの曲を作るのは苦手」と言ってた初音ちゃんが、「アップ」のつもりで頑張って作った、”ミディアム”ナンバー「孤独の戦士」「くつずれ」の2曲から(*^ー^)ノ
”楽しさ”という観点から言えば、「くつずれ」が群を抜いて楽しかった!ワウギターのちょっとしたファンキーさとか、遊び心のあるドラムアレンジとか、初披露の8月から少しずつ少しずつ楽しくなってきた曲の、ひとつの完成形だったかもしれない。初音ちゃんとバンドメンバーの楽しそうなアイコンタクトとかね。幸せすぎるだろ!ぼくはけっこうノリノリで動いてたんだけど、みなさんどうでしたか!?笑

ハッピーバースデー♪のサプライズの後、「モノクロの空」「負けないココロ」。

新曲「負けないココロ」。初音ちゃんが持つのは・・・ストラトキャスター!!!(・∀・) ちょっとチグハグな感じも初音ちゃんぽくてイイ!w 曲はロックなギターの入りが印象的で、「ホントはね」と同様、シングル向けの編曲。聞き込まないと何とも言えないけど、最後に初音ちゃんが軽くエレキ振り回す姿を見て、とりあえず「授業中に詞を書いてしまう」「ウトウトしてしまう」ほどの”ワル”な初音ちゃんを見てみたいと思った(^ω^)

アンコール

まだアンコールのやり方も揃わないくらい初々しい現場。現場ができるのはこれから。
キーボードがセッティングされ始め一部どよめく。1曲目は曲名不明の、本人によるシンプルな弾き語り。ぼくは8月からの新参者なので、彼女のピアノ弾き語りを見るのは初。「インディーズの頃は、大きなキーボードをカートに乗せてお母さんと一緒にショッピングモールで歌っていた」という、いつかのMCで言ってたエピソードを思い出してた。
メンバー紹介からそのまま続けて、入りをスローバラードにアレンジした「ホントはね」。暖かい拍手をもって終了。約1時間40分のライブでした。

全体の感想に代えて

「17歳の頃の夢、あなたは今も覚えていますか?」

このキャッチコピーは、ふつうに読めば、17歳を通過した大人へ向けられたメッセージであるだろう。でも一方で、奥村初音のブログ「恋、紡ぎ」のコメント欄を見ても明らかなように、彼女のファンには、同世代の女の子のファンもかなり多い。では、彼女たちにとってこのメッセージはどんなふうに響くだろうか。
もしかしたらそれは、17歳をとうに通過したぼくらと変わらないのかもしれない。
なぜなら、彼女の歌う姿は、いつも、どんな年齢の人に対しても、「あなたは今も覚えていますか?」というメッセージをもっていると思うから。
今できること、今しかできないことを、等身大の姿で、自分の言葉で、丁寧に、そしてほんとうに”届く”ことを信じて、彼女は歌っている。”届けよう”という意志の強さではなく、届くことを”信じている”その姿に、人の心を動かすものがある。

このワンマンライブを通して、改めてそのことを確認できたような気がします。

そしてこのワンマンライブを最後に、デビュー以来お世話になってきたディレクター陣が変わってしまうとのこと。これからどんなディレクションをするにしても、彼女のもっているものを、ほんとうに、ほんとうに大事にして欲しい。このことだけは、彼女のことが大好きなファン全員の願いだって、ぼくは自信をもって言えます。

印象に残るとても良いライブでした。

*1:だからこそ唯一の例外、3曲目「君を想うと…」で、役者の井川千尋さんと背中合わせに座り、振り向いて笑顔でごっつんこする場面は神懸かっていた。ぼくはこれを"神話的ごっつんこ"と呼びたい! http://www.barks.jp/feature/?id=1000043197&p=18