よし。夜中だからもう少し書いてしまおう。
直径十センチほどの、十分前までバニラアイスクリームの入っていた器は、窓から差し込んでくる傾いてもう消えそうな日光に当たって、分厚いガラスの中に残った気泡が輝いていた。深い群青色がだんだんと透明になっていくグラデーションは美しかった。だから、絵莉はそれが自分のせいだったらいいのに、と思っていた。
正確には、自分が春生を好きになったせいだったらいいのに、と思っていた。ガルシア・マルケスの「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」という短い小説の中に、エレンディラに恋をした少年・ウリセスがガラスに触れると青色に変わる場面がある。それを見てウリセスの母親が、恋をしているせいだ、と言う。絵莉はその場面が好きで、そこばかり何回も読んだ。恋が始まったときも、終わったときも、読んだ。それで、先週もまた読み返した。
今、目の前で、心の中がすうっと外へ広がっていくように感じられるほど美しい青色が、自分のせいだったらいいのに。隣にあるミネラルウォーターのペットボトルも愛想のないコップも、みんなきれいな色に変わればいいのに。それから、ウリセスがそうだったように、パンも食べられなくなったらいいのに、と思った。
柴崎友香「ブルー、イエロー、オレンジ、オレンジ、レッド」(『主題歌』所収)p175-176
特にオチはないです。あんま意味もわかってないです。サーセン。
ただ、この箇所を読んだとき、
「うっわ!!いますぐ飴ちゃんに伝えたいコレ!!!!」って思った。
さすがに、こんな引用文を送り付ける訳にもいかんから、ここに書いとく。
どうだ!キモチワルイだろwww
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