ソニックブームの衝撃音

論理の壁の外側に出るためにはどんなスピードが必要であるかを考えてみるとよい。論理が言語によって構成されているとすれば、論理の速度は音速である。言語も音であるのだから。したがって論理の壁を破るには、音速を越えればよいのである。

音速を超えるとき、ソニックブームが起こる。飛行機は、自分が作った音の波動を自分の周辺に持っているが、その波動の囲みを自分自身が破るとき、激しい衝撃音が出る。これがソニックブームである。自分の思考、論理、言語よりも速く動く主体は、ソニックブームを引き起こす。

解釈は、意味を押しつけるのではない、それは主体が言語の壁を破ったときに、意味に先んじて音として聞こえてくるものである。

祖師の「喝!」は、ソニックブームに他ならない。

新宮一成ラカンの精神分析 (講談社現代新書)