女子高生はなんとなくケータイが見たかった

夕方のわりと空いている電車の吊り革に、部活帰りの女子高生が右手で掴まっていた。腕まくりをした掴まっているほうの手の平には、ケータイが開いた状態のまま握り締められている。吊り革に手がぎりぎり届くくらいの身長で、右腕をほぼ真上にぐんと伸ばし、掴まっているというより、手首の根元を吊り革の輪っかに通し、なんとかひっかかっている。離せばいいのだけれど揺れが激しい区間なので離すに離せない。吊り革につかまりたいし、なんとなくケータイも見ていたい女子高生は、首ごと真上を向き、伸ばした腕の先にあるケータイ電話の画面を、ぼんやり眺めていた。