Perfume 3rd Album「トライアングル」感想

なんだよ、全然いいじゃん。少なくともGAMEより好きだわ。前評判が悪かっただけにむしろ拍子抜けしたくらい。

あんなに嫌ってたDream Fighterが流れの中で聴くと気にならなかったのが不思議。edgeの三角mixは尺の長さで1曲入魂的な聴き方を宙吊りにさせてくれるし、Night Flightは諸手を挙げて好きだけど、こんなキャッチーでアグレッシブな曲が他に数曲並んでたらたぶんウザくて聴けなかったと思う。アイドル歌謡「I still love U」はネタに見せかけた本気の照れ隠しだとわかっていても戸惑うけど、西脇さんに「カラオケにも超いいと思います!」*1と言われると、どっちらけというか色々どうでもよくなる。

なんで”いいんじゃない?”と思ったのか。アルバムとしてのまとまりを感じたから。なんで”好き”だと思ったか。たぶん抑えられた温度がちょうどよかったから。Night Flight以外の新曲で特に好きな曲はないけど、アルバム全体としてはBGMとして聴けるから好き。いろいろ理由をこねくりまわしてみたけど理由は至って単純です。

20歳はそんな大人でもないし子供でもない。年相応の雰囲気を纏おうとしてる20歳のアイドル。Kiss and Musicにある「勇気ないのね 踏み出せないの?ねえ」なんて「三四郎」的セリフを*2、いかにも甘ったるい歌唱で仕上げるところなんて20歳らしいじゃん。曲や歌唱の中途半端さと20歳の現在との間を結びつけることは、それこそロキノン的幻想かもしれないけど、もう何年か先からPerfumeディスコグラフィを振り返ったとき、この3rdアルバムは20歳のドキュメントとして/味わい深い過渡的作品として、異色さを保っているような気がする。

「Take off」から始まり「Night Flight」「Speed Of Sound」など「飛行すること」がこのアルバムのイメージになっているせいか、ラストの「願い」を聴いているとき、”飛行船”と聴こえて仕方がなかった。*3 そして聴き終わったとき、映画『子猫をお願い』のラストシーンの飛行機のことを思い出した。頭上を遮って通り過ぎた飛行機が視界から消えるのだけど、その飛行機はいま飛び立ったのか、それとも着陸しようとしていたのか、あの映画ではそれはわからない。take offしてそのままだ。

あの映画のラストには「Good bye」と表示される。GAMEから較べるとそんなに変わっていない。コンベスから較べると変わった。トライアングルにはそれぐらいの変化はある。だから、願うなら、僕は「寂しいね」って言って笑い合いたい。だれと?Perfumeの3人とだよ!んでやっぱり平行線な現実に引き戻されてお部屋の片隅で泣くんだよ!とか言ってみたもののそんな激しい感情ほど不似合いなものはない。デイリー1位。初動9万枚ってスゲーじゃんか。こんな地味なアルバムが日本で1位になるとかスゲーな。西友の8畳しか売り場がないCD屋でもヘビロテしてたよ。


あ、まともな音楽レビューは他サイトを見てください。僕は知識がないので残念ながら感想しか書けません。
それと、韓国でも見てくれてる人がいるので1曲だけ。Perfumeで「Night Flight」。名前だけでも覚えて帰って下さい。

*1:「TV Bros」7.11-7.24 14号, 2009

*2:「あなたはよっぽど度胸のない方ですね」(夏目漱石『三四郎』)

*3:正しくは「平行線」